誕生日当日! 第2弾 0112BD 2018年01月12日 リオットさん誕生日おめでとう!リオットさん姫と幸せになって!もうなってるけど!今まで以上に!!ということで、祭2本目。アニが恋人リオットの家に行くことになる話(行くとは言ってない)。これはpixivにも上げます。■「それじゃあ、5日間お世話になります」ミリドニア王国グルカオン城謁見の間にて、アニはナレク王子と対面していた。ナレクの隣には筆頭貴族のヴィーノが、後方には騎士団長であり、アニの恋人であるリオットが控えていた。この度アニはミリドニアの祝典行事の賓客として招待を受けていた。「国の祝典に、肝心の国王が不在ってことにはびっくりだけど……」「それは、父上だからな!」アニの当然の困惑に返ってきたのは、自慢げな、しかし何の説明にもなっていないナレクの言葉だった。「ちなみに、今回はお前のためにこの城の客間を一室用意した。ありがたく使うといい」「お城の?ということはヴィーノのお屋敷じゃないんだね」「そう。ボクとしては、お花ちゃんならいつでもウェルカムなんだけどね~」「残念だがそうはいかん。なぜなら、その部屋には最新の俺様の肖像画・祝典バージョンを飾っているからな!どうだ、嬉しいだろう!」「まあ、歓迎の気持ちは嬉しい……かな?」アニが本音の9割を隠した返答をしながら後ろのリオットを窺うと、彼は思いっきり苦々しい顔で溜息をついていた。対照的なナレクとリオットの様子をよそに、ヴィーノがいつも通りの気楽な調子で言う。「ともかく、うちの屋敷はいつお花ちゃんが来ても大丈夫なように準備してるから、お城に飽きたらすぐおいで!なんならボクの自宅に来てもいいし、今すぐにボクの腕の中に飛び込んできてくれても――」「ヴィーノ様」地を這うような低音がヴィーノを制する。声の主は苦々しいを通り越し、今にも牙を剥かんばかりの警戒心を露わにしていた。「そんな怖い顔しないでよ。ボクはお花ちゃんの意見を尊重したいだけなんだから。お花ちゃんは、ボクの腕の中を希望しているかもしれないし――」「希望してないからね!?」「リオットの家を希望しているかもしれないし?」「?!」ヴィーノの話が思わぬ方向へ進んだため、アニの顔が赤くなり、リオットも動揺した表情を見せる。「そういうわけだから、二人で相談でもしなよ~。さ、行こうか、ナレク」「……なんだこの空気は……なんだか落ち着かないぞ」そわそわするナレクを連れて、ヴィーノが広間を後にする。残された二人が顔を見合わせた。一瞬の沈黙の後、リオットがごほん、と咳払いをした。「……ヴィーノ様のおっしゃったことは、どうかお気になさらず。しかし、姫にご希望があるのなら極力その通りに手配しましょう」あくまで事務的な態度で対応するリオット。水を向けられたアニは始め口籠っていたが、意を決して自身のリクエストを口にした。「もしお邪魔でないなら、その……リオットさんのお家に、行ってみたい……です」アニの願いに、リオットがわずかにたじろぐ。「邪魔などでは決してないが、一国の姫を迎えられるような居所では……」「……なら、4日目で公務は終わるので、その後にただのお客さんとして伺うのは、ダメですか?」アニがリオットをそろりと見上げ遠慮がちに尋ねると、リオットは口元を手で覆い勢いよく顔を背けた。その耳が赤く染まっていることに気づいていないアニは、困らせてしまったのかと心配そうな顔になる。リクエストを撤回しようとした、その時だった。「わかりました。最後の一晩は我が居宅にお迎えしましょう」顔を背けたまま、リオットが答える。すると、承諾を得られてアニが笑顔になった。「ありがとうございます!……あ、でもこんなに急で、準備とか色々お手間を掛けさせてしまいますよね」「いえ、その点は問題ありません。それよりも、私の自制だとか忍耐が…………」だんだん小声になるリオットに首を傾げるアニ。「あの、本当にご迷惑じゃないですか?」「……問題ありません。私もその日は夜通し姫を警護する予定でしたので」「まさかの自主的不寝番宣言!護衛はいいのでちゃんと休んでくださいね!?」「……休める時は休みましょう。せっかくの姫と過ごす時間なのだから」リオットのその言葉でアニはやっと安堵すると、嬉しそうに言った。「はい!……楽しみにしてますね!」それからの3日間、アニは公務に精を出した。慌ただしく過ごすうちにあっという間に時が経ち、気づけば滞在4日目。全ての仕事を終え、ちゃっかりキャラバンも手伝ったアニは、逸る気持ちを抑えながら騎士団詰所へと向かった。詰所に着き、いつものように扉をノックするも返事がない。何度ノックし呼びかけても反応がないため、アニは少し迷ったのち戸を開けた。「うん、そんな気はしてた……」アニの独り言が誰もいない部屋に響く。どうやら騎士団の面々は全員出払っているらしい。もしかしたら何か事件が起こってそれに対処しているのかもしれない、と考えアニはうーんと唸り声を上げた。ここで待っていればリオットは戻ってくるだろうが、それまで何もせずただ待っているというのはどうも落ち着かない。詰所の中を見回していたアニは、やがて腕まくりをすると、机に散乱した書類に手を伸ばした。やがて窓の外が薄暗くなった頃、せわしない靴音と共に詰所の扉が開いた。「やはりいらっしゃったか……姫、お待たせして申し訳ない」部屋に入ると、リオットは真っ直ぐにアニの元へ歩み寄った。「いえいえ、リオットさんこそお疲れ様です。お仕事は大丈夫ですか?」「やっと片付いたところです。姫は……」そこでリオットはアニとその周りの状況を見て、アニが今まで何をしていたのかを察する。「……姫もお疲れだろうに」困ったような、しかし優しい笑みを浮かべるリオットに、アニも笑顔で返す。「これくらい何てことないですよ!それに、リオットさんと会ったら、今日までの疲れも全部吹き飛びました!」リオットの手がアニに伸びる。気づけばアニはリオットの腕の中にいた。愛する人の温もりを感じられる喜びと、誰かが入ってきたら気まずい空気間違いなしなことへの心配の間で葛藤するアニだったが、リオットは全く気にする様子もない。ふとリオットがアニの手を取る。「花のような香りがする」「花……、今日キャラバンでポプリを触ったから、その匂いかも」アニはキャラバンに立ち寄った際、ミリドニアの花で作ったポプリをイナコ製の木箱や布袋に詰め、それを今日の目玉商品として売っていた。「ポプリの香りにはリラックス効果のあるものもあるんですよ。リオットさんのお家にもおひとついかがですか?」「ポプリもいいかもしれませんが……」そこまで言うと、リオットはアニの髪に鼻先を埋める。「今は、姫の方が」リオットのこの言葉と行動に、アニは何も言えなくなる。アニの顔の熱が引いて「そろそろお家に帰りませんか?」と言い出すまで、リオットは一番の癒しを享受し続けた。