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ミリドニアなう

小話

なんとなく完成したので改めて投下してみる。
トウコ(とゲーチス)の話


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今日はこの先で新しいポケモンを探そうかな。一日の予定を考えながら、私は街中を歩いていた。
向こうから昨日バトルしたバックパッカーのお兄さんが歩いてきたので「おはようございます」と挨拶すると、「おう、おはよう」と元気よく返してくれた。

旅に出て、たくさんの人と出会った。そして出会った人々はほとんどがいい人だった。……ごく一部、明らかに悪い人もいるけれど。
でも、そういういい人たちの、特に大人の人の言葉が、たまにひどく重荷に感じられることがある。
目標を持ってそのためにがんばって、そしてなにかを成しなさい、どんなに小さなことでもいい、自分に誇れることをしなさい。
時に大人たちはそんなふうに、私たちが進むべき道を示すように親切そうに言葉を掛けてくる。

思い出すのはアデクさんがチェレンに言った「チャンピオンになってどうするつもりか」という言葉。あの問いかけはきっと私にも向いていた。
あれ以来チェレンはとても悩んでいるけれど、そもそもチャンピオンになることを目標にしていたわけでもない自分はそれ以前の問題だ。
ただずっと旅してきたポケモンたちと一緒に挑戦してみたいから、なんていうのはポケモンリーグに挑む理由にならないみたい。理由とか目的とかって、絶対になくちゃダメなんだろうか。

「――……。プラズマ団のゲーチスです。……」

ぼんやり考えていた私の耳に、聞き覚えのある、よく通る声が聞こえてきた。
どうやらまたあの「ポケモンの解放」とやらを訴える演説をしているらしい。

そういえばこの人も初めは私にポケモンを手放すという道を進ませようとしてきたっけ。そんなこと絶っ対しないけど。
でもそれってある意味他の大人と同じじゃないか?
全然違うことはわかってるし、そんなこと言ったらまともな大人たちが怒っちゃいそうだけど、でもやっぱりおんなじだ。みんな好き勝手言ってきてさ。

特に理由もなく広場まで歩きながらそんなことを思ったら、なんだかおかしくて笑えてきた。
気づけば目の前には語り終えたゲーチスが。

「随分ご機嫌のようですが、笑顔になる程ワタクシの話に共感されたのですか?」

いつものように人を見下したような薄笑いのゲーチスは、話し掛ける言葉の中身もいつもの通り、人を馬鹿にするものだ。
それがまたおかしくて、今度は笑い声がこぼれてしまった。

流石に怪訝な顔をするゲーチスに、私は言った。

「ううん。――ゲーチスはゲーチスだな、って」

呆れたように息をついてゲーチスが言う。

「訳のわからないことを。……まったく、選ばれし者である自覚を持っていただきたい」

勝手なことを言うだけ言って、ゲーチスは広場を後にした。

選ばれたとか英雄とか、それこそ私には訳のわからない話。
でも、アンタが好き勝手言うように、私も自分のしたいようにする。文句は言わせない。

少し気の晴れた私は、ゲーチスが去ったのとは逆の方向へと駆け出した。


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書いているうちにとっ散らかっちゃった感がある…
でも書きたい方向が見えてきた気もする。書くとは言ってない。

繊細で難しいお年頃のトウコちゃんにとって、ゲーチスさんはそれなりに大きな存在だと思う。
悪人といえばあいつ、カリスマ・リーダーシップといえばあいつ、強いトレーナーといえばあいつ、…みたいに価値観の形成にがっつり影響を与えていればいい。

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